Four Facets of Contemporary Japanese Architecture: Humans

Four Facets of Contemporary Japanese Architecture: Humans

高松市の「船の体育館」は丹下健三の傑作と言われますが、老朽化で取り壊しが決まりました。黒川紀章の中銀カプセルタワービル、前川國男の東京海上日動ビルも惜しまれながら取り壊されました。

永年ランドマークにもなってきた、有名建築家による公共建築、高層建築が、補修維持費が確保できず、かつ耐震改修の不備から、次々と失われてきています。すべては100年使われる前提で作られたにもかかわらず、60年ほどでの撤去です。惜しむ声は止みませんが、管理・利用する側としては重大な問題を抱えることになります。水漏れや剥落、アスベスト問題、屋根が落ちて死傷者が出たら誰が責任を取るんだ?と責められる。

多くの建物が建築家の業績たる先進的設計のため、修理には特注部品を要し、利用環境の変化に沿ったインフラ改善工事も困難なケースがあるようです。そういった、華やかな近代建築についての振り返り、特に丹下健三の業績の振り返りがこの講義「Four Facets of Contemporary Japanese Architecture: Humans」で行われています。丹下たち建築家はル・コルビュジエ他の影響下に作られた「人にとって理想の建物」を追求しましたが、空調や配管は二次的に考えられ、当時の技術者の創意工夫で設備は実現しました。しかし紆余曲折を経た現在の需要にアップデートできる余地はありません。

また、部品、調度品を大量生産品でないもので揃えたり、無柱空間の保持のため、水平垂直にこだわらず自由なフォルムを追い求めつづけました。どうしてそんな設計が受け入れられたのか、称賛されてきたのか、そこに意味はあったのか、この講義では、当事者たる建築家、後を任された建築家との対話によって、その意味と課題を掘り起こします。

そうしてザハ・ハディドのプランが潰えた後に完成した新国立競技場において、人間が住む、暮らす、働くこと、人の諸活動の品質を守るために建築家がこれからどう営為をなすべきなのか、設計者の隈研吾特別教授によって総括されます。

数年にわたって続いてきたこの講義の最後の収録が新国立競技場で行われたことは全スタッフに感慨深い最後の仕事となりました。

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