スウェーデン王立工科大学での活用報告
スウェーデン王立工科大学(KTH)で20年以上日本語教育コースを運営している調 亜紀子さんにスウェーデンの日本語教育事情とMOOC日本語講座に期待することについて伺いました。
調べさんの授業では、本学MOOC講座“Let’s Read! Learning Japanese through Science & Technology Part 1, Part2 ”をご活用くださっています。
***** KTH(KTH Royal Institute of Technology)での活用 *****
KTHでは、年間約100名の学生が日本語を学習しています。
学生たちははっきりとした目的意識を持って学習をしており、日本への留学準備やそれぞれの専門分野でのキャリアに活かすことが主な目的です。
スウェーデンでは2000年ごろから日本ブームの流れがあり、テクノロジーへの憧れやアニメ・音楽などの文化的関心から、現在では日本の食品の品質の高さや清潔さ、治安の良さなどの魅力が注目されています。特に物の値段に対しての品質の高さは驚きのようです。
ストックホルム大学という人文系の大学で日本語を教えていた時、日本語・中国語・韓国語のアジア言語を学べる学科に所属していましたが、もともとは日本語がダントツで人気でした。
ところが2000年ごろ、ちょうどコロナ禍を境に、日本語学習者は半減し、代わりに韓国語学習者が急増しました。
日本語学習者が減ってしまった一因としては、文系学生にとっては日本語を学んだところで、日本語専門になってしまうので将来のキャリアにつながりにくいということがあるのだと思います。
ただ一方で、KTHに所属している理系の学生にとっては、日本語はキャリアのプラスになるので、学習者は依然多いです。
このように学生は、キャリア形成を視野に入れて外国語を学んでいますが、かといって実際は専門分野に関連する言葉ばかりを学びたいというわけでもなく、彼らも人間ですから、専門分野を勉強している中で、語学の授業では背景にある文化的なことに楽しみを見出しています。
”Let’s Read! Learning Japanese through Science & Technology”のような大学の研究室での取り組みを主軸として、背景にある日本の風土・文化をプラスアルファで学ぶことは、学生にとって魅力的です。
例えば紙のエプロンを出して、これは何かと学生たちに問いかけます。学生たちは「なにそれ?」と。
そして「こんな風にして、ラーメンの汁が飛ばないように使うんだよ」と見せると、学生たちは「そんなこと考えたことなかった」と日本人の衛生観念に驚くわけです。
それが日本のテクノロジーの背景として結びついたときに、彼らにとっては驚きとともに、最高の日本語の授業となると考えています。
MOOC講座は学生のペースと目指している能力に応じて、教室との授業と連動して使用しています。
中でもカラオケのように進んでいく「アニメーション動画」がとても好評です。
また「研究室のインタビュー」の部分は、途中で止めて内容を確認したりしながら学んでいます。
***** 新規開講予定講座「Careers and Job Hunting for International Students in Japan」に期待すること *****
来年開講が予定されている日本語講座“Careers and Job Hunting for International Students in Japan”は、日本で就職活動をすることがテーマになっていますね。
書類の書き方や面接の受け方を学ぶことも大切ですが、そもそも日本って一体どんな国なのか、授業でディスカッションをしながら学んでいけるような内容も期待したいです。
私が担当している授業では、キャリアに直結する課題を三つ出しています。
一つ目の課題ではエントリーシートを書くのですが、ここに来年開講予定のキャリア系日本語MOOC講座を持って来られたら効果的ですね。
そして二つ目の課題は、自己PR動画の作成です。
これは普段は静かな学生がPR動画になると素晴らしいプレゼンテーションをしたりして、驚かされることも多いのですが、このモデル教材として、MOOC講座を使いたいですね。
日本ではどんなことを話すのか、外国人として日本で就職するためには日本語で動画を撮った方がいいのか、英語でやった方が見栄えがするのかなどの、テクニック的なことにも講座で触れてもらえたら嬉しいです。
三つ目の課題は、実際の面接の場を想定して自分の専門分野をきちんと日本語で話すことです。
この三つの課題をやり終えた学生は、もう明日にでも仕事のオファーが来たら面接に行ける、というところまで持っていきたいと思っているため、東大MOOCの新講座にも実践的な内容があることを期待しています。